健康と美容を育むオイルプリング

コロナ禍と言われて早2年の月日が経ち、日頃から感染予防に努めることが習慣になっている方も多いでしょう。
最近では、一定距離が保てる屋外ではマスクを外していいのではないか、ということが議論されています。
しかし、それでもなお手洗いうがいは感染予防に欠かせないという認識には変わりありませんよね。
例年インフルエンザが流行する冬場において、手洗いうがいが習慣的に行われるようになったことにより、インフルエンザ感染者が顕著に少ないというニュースを見聞きしたことがあるのではないでしょうか。
経口感染という言葉があるように、口が細菌やウイルスなどを体内に取り込んでしまう、文字通り入”口”となるわけです。
今回は、その“口”に焦点を当てて、健康を手にするとともに美容にも貢献する「オイルプリング」についてお話ししたいと思います。

口内は思っている以上にキタナい?

口の中は、歯周病や歯肉炎といった歯・歯ぐきの病気だけではなく、その人の身体全体の健康状態が如実に表されるといいます。
例えば、舌の状態をとってもみて、表面が割れていたり、紫や白色に変色していたりしたら、何かしらの体調不良なのではないか、ということが簡単にわかりますよね。
虫歯菌が神経に侵入して激しい痛みに襲われることだってあります。
また口から摂取したモノは、身体の中を通って便として排泄されるわけですが、きれいなモノを摂取しても便がキタナいということは体の中がキタナいということ、もっと言えばその入口が汚れていたら、体の中を通るときずっとキタナいものが通ることになるのです。
それでは、あなたは自分の口の中はどれくらい清潔に保たれていると思いますか?
1日2~3回歯磨きをしているから結構清潔な方だ、マウスウォッシュでうがいもしているし完璧だ、と思うかもしれません。
実は、人間の口の中には何百種類もの菌がいて、歯垢(プラーク)にいたってはたった1㎎の中に1億以上の菌がいるとも言われているのです。
テレビCMでは「隠れプラーク」という言葉を使っていますが、歯磨きではプラークを完璧に取り除くことができないため、ほとんどの人が“磨き残し”があるはずです。
それにしてもものすごい数の菌がいるのですね。
好きな人とキスをするという行為は、バクテリアの交換を行うためと言われていますが、それにしても多いですよね(ロマンチックのカケラもなく失礼しました)。
ちなみに10秒間のキスで交換されるバクテリアの数は、8000万にも及ぶそうです(想像するのはやめておきましょう)。
もちろん「善玉菌」という言葉があるように、すべての菌が悪いというわけではなく、身体に良い影響をもたらす菌もあります。
この点、近年流行っている液体マウスウォッシュは、良い菌、悪い菌問わず殺菌してしまうため、口の中が無防備な状態になってしまい、逆に口内環境を悪くしてしまう可能性があります。
また虫歯予防に効果があるとされる「フッ素」ですが、毒性や骨への悪影響を指摘する声もあり、虫歯への効果と引き換えにその他の健康を害するのではないかという不安が拭えません。
さてどうしたものか…このような悩みを解決するのが、“オイルプリング”なのです。

いにしえの叡智“オイルプリング”

“オイルプリング”は、インドの生命科学“アーユルヴェーダ”の自然療法が起源とされています。
その名のとおり、植物性の油(Oil)でうがいをして、菌を引っ張り出す(Pulling)という意味です。
以前「ココナッツオイル・プリング」がセレブの間で流行っていたため、オイルプリングを知っている方もいらっしゃると思いますが、アーユルヴェーダではセサミオイル、つまりごま油を使用するのが一般的です。
オイルプリングの効果は、以下のようなものが挙げられます。


・免疫機能向上
口の中の菌をオイルを使って外に出すことになり、結果的に体内に侵入する菌を減らすことができます。
つまり悪い菌と戦う免疫機能に余力ができ、その他健康を保つための機能にリソースを割くことができるようになるのです。


・口内トラブルの予防
歯磨きでは取り除ききれない菌をオイルで引っ張り出して吐き出すことになるため、口内環境が良くなり、口内トラブルを減らすことができます。
液体マウスウォッシュは“殺”菌するのに対し、オイルプリングは引っ張り出すのです。
水のうがいでは取り切れない菌も、オイルプリングなら吸着させることができます。


・唾液分泌の促進
唾液というと食事をするときに消化を助ける役割かなと思うかもしれませんが、唾液には保湿、殺菌などをはじめ口内環境を正常に保つ役割も担っています。
オイルプリングをしていると唾液腺が刺激され、唾液がたくさん分泌されるため、特に口呼吸をする方の乾いた口内を正常に戻してくれます。


・アンチエイジング
ほっぺたが少し膨らむくらいにオイルを含んでオイルプリングを行うと、普段動かさないような表情筋を意識的に動かすことができます。
これによりほうれい線の予防やたるんだフェイスラインの改善などのアンチエイジング効果が期待できます。
あるいは表情筋が鍛えられることにより表情がより豊かになり、笑顔が素敵だね、と言われるようになるかもしれません。
その他にも歯のホワイトニング(歯の吸着汚れがリセットされる)や口臭予防なども挙げられますが、何より菌やウイルスの入口がきれいになればその効果は身体全体に及ぶ可能性が高いということが大切です。
何事も始まりが肝心なのです。

オイルプリングの技法

それでは、具体的にオイルプリングの方法をご紹介します。
まず「どの植物性オイルを選ぶか」ですが、先にご紹介したとおりアーユルヴェーダでは一般的にセサミオイル(ごま油)を使用します。
近年に人気があるココナッツオイルも抗菌作用が高いとされていますが、クセがあり日本人に馴染みが薄い(本来の体質に合わない)、冬場では固形化してしまうこともあるため、やはりセサミオイル(特に焙煎していない太白ごま油)をオススメします。
いずれのオイルを利用するにしても、純度の高い、質の高いオイル(できればオーガニック)を使うようにしましょう。
うがいして吐き出すのであれば安いモノでいいではないか、と思う方もいらっしゃると思いますが、一定のオイルが身体に浸透していくことになるため、食べるモノと同じであると考えましょう。
“キュアリング”という純度を高めてより浸透しやすい状態にする方法が推奨されることが多いですが、手間がかかると日常生活で習慣化をすることが難しくなってしまうため、こだわる必要はないと思います。
その分、もともとの質が高いものを選ぶことが大切です。
次に「いつやるか」ですが、朝の起床後コップ1杯の水を飲んだ後すぐがオススメです。
口の中には菌がたくさんいるということは先程お話ししましたが、起床後すぐの口の中は、うんちよりキタナい(菌が多い)とも言われています。
寝ている間は唾液の分泌が少なくなり、菌が繁殖しやすい環境になるからです。
さて具体的な手順は、以下のとおりです。

  1. オイルをほっぺが膨らむくらいに口に含む巷では大さじ1杯(15ml)程度としているところが多いですが、ほっぺが膨らむくらいを口に含むようにしましょう。これは引っ張り出す菌の密度を下げる(量が少ないと菌だらけのオイルでうがいすることになる)、表情筋をより多く刺激するためです。男女差、個人差もあると思いますが、30ml前後でも良いと思います。ただし、オイルプリングの過程で唾液も分泌されることも考慮して、口からこぼれ出ず、かつくちゅくちゅできる程度にしましょう。100円ショップで少量を測れるビーカーもあるので、活用してみるといいかもしれません。
  2. 口の中でオイルをくちゅくちゅと様々な方向に動かしてうがいをする
    口の中には様々なところに菌はいるので、全体に行き渡らせる必要があります。
    前歯の隙間、左右の奥歯、舌の下など、まんべんなく行き渡るようにオイルを動かしましょう。
  3. オイルプリングを20分間行う
    短すぎず、長すぎず、20分間オイルプリングを行いましょう。
    短すぎるとオイルの成分が浸透せず効果が得づらくなり、逆に長すぎると菌を含んだオイルでうがいすることになるため逆効果になってしまいます。
    朝20分間オイルプリングを行う時間をつくると、朝の時間に余裕も生まれるため、ぜひ時間を確保するようにしてください。
  4. オイルプリングが終わったら、ゴミ箱に吐き捨てる
    オイルプリングが終わったら、食べられるものだからと言って、絶対に飲んではいけません。
    菌をより身体の奥に送り届けることになってしまいます。
    また流し台・洗面台に吐き捨てると、排水溝詰まりの原因になるので、こちらもやめましょう。
    ティッシュやキッチンペーパーなどに吸わせ、ゴミ箱へ吐き捨てるようにしましょう。
    吐き出したオイルは、乳白色になっているはずです。
  5. ぬるま湯で口を軽くすすぐ(+通常の歯磨き)
    口に残ったオイルにも吸着した菌が残っているため、最後に口の中に残ったオイルを軽くすすいだら、オイルプリング完了です。
    そのまま通常の歯磨きをしたい人は、歯磨きしても良いでしょう。
    以上がオイルプリングの方法です。
    朝の時間帯に20分を確保する以外は簡単ですよね。

オイルプリングを実践して健康と美容を手に入れよう!

今回は口の中から健康になり美容も手に入れる“オイルプリング”をご紹介しました。
これまでオイルを口の中に直接含むという経験はほとんどないと思われ、始めてすぐのころは体調が悪くなってしまったように感じることもあるかもしれません。
しかし、これは身体の健康の改善前に起こる一時的な症状(「好転反応」という)の可能性もあります。
おおむね3、4日、長くても1週間程度で治まることが多いため、継続して取り組んでみましょう。
ただし、あまりにもひどい症状だったり、1週間超えても続いたりする場合は、決して無理はしないでください。
オイルそのものが身体に合わないこともあるからです。
オイルプリングを行って口内環境を整え、そしてオイルプリングを朝行うために生活習慣を整えて、健康と美容を手に入れましょう。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。